いま…

苗場スキー場にいる。
そして苗場プリンスホテルのゲレンデに面したベンチに座っている。


山肌が随分と見えているが、まだスキーには十分な雪が残っている。
が、私はスキーはしていない。ベンチでゲレンデを仰ぎながら本を読んでいる。夫と友人三人が11時からスキーを楽しんでいる。
何で私がスキーしないかって?別にできないわけじゃない。中学のスキー旅行では上級者クラスの中で上位だった←っていつの話やん!(笑)
しかしスキーはこの五年やってない。最後に行ったのは結婚前に父と母と弟と夫と行ったときだろうか。


私の父は大のスキー好きでスキー場に囲まれた長野市内の山に畑付きの家を買った。長野の家にはスキー板やスキー靴を置くスペースがあって、父に買ってもらった道具やウェアも置いてある。小さい頃はよく家族でスキーに行ったが、大学に入ってからは忙しくあまり行くことも少なくなった。私は長野にウェアから板、靴など全て揃っているのに、スキー場でレンタルするのが嫌なのだ。←ただのケチ?(笑)まぁ借りてまでやりたいとは思わないと言うのが本音だ。


予定では、ゲレンデを見渡せるレストランでおいしいコーヒーとケーキでも食べながら本を読むはずだった。しかし、シーズンも終わりに近づいているということでレストランはほとんど閉まっている。そこで仕方なくベンチに納まっているわけだ。まぁゲレンデの真前でちびっ子たちの苦労しながら方向転換しようとして転んで…という姿を見ていると自然と頬がほころぶ。自分の小さい頃が思い出される。父に連れられ初めてスキーに行って教室に入ったこと、板が重くて辛かったこと、父と一緒に滑れるようになって嬉しかったこと…色々思い出される。

本当はスキーをしない私は今日は家にいる予定だった。しかし、昨晩、昼寝をしたせいで眠れず、嫌な事を色々考えてしまい、最終的に父のことを思い出し、悲しくなってしまった。ベットを抜け出し父の写真を見ながら二時間近く号泣した。朝早い夫が起きてきてびっくりして、一緒に行こうとなったのだ。一人で家に閉じこもっていたら、今だにきっと泣いていただろう。
父の写真を持ってきた。昨晩からずっと見ている写真だ。出掛けに思いついた。「そうだ。スキーが大好きだった父をスキー場に連れていってあげよう」と。
きっと父は満足しているに違いない。


桜が咲いていた。はかなげで綺麗だった。


「何かあったら電話してね」と言って出掛けていった夫に今どこら辺にいるのか電話してみる。「留守番電話サービスです…」どうやら山は圏外らしい。まぁいいやと本に目を落とす。


ちびっ子スキーヤーを見ながら、子どもが生まれたら父のようにスキーを教えてあげようと思った。