声

今日は一人の休日。夕方までベットでまどろんでいた。とろとろ夢を見たり見なかったり。思い出せないけれど、何かの夢を見ていた時、
「nekosiroちゃんー」と呼ぶ父の声が聞こえた。実家の一階から二階に呼びかける声。私は思わず「はーい」と返事をした。
ハッと起きた。急に父の声がしてビックリした。まさに父の声だった。二階にいる私をちょっと声をあげて呼ぶ父の声。
驚きと嬉しさと淋しさと入り交じった不思議な気持ちだった。
母に電話して話した。こんな声だったと表現しようとしても何故か雰囲気が思い出せない。ただ、いつもの父の声だった。二階にいる私を呼ぶ声だったと言うことは確か。
母は「あんたに、そろそろ起きなさいー」と言うことだったんじゃないの?と言う。


最近父のことばかり考えている。この所、父のことは随分自分の中で気持ちが落ちついたなぁと思っていたのにだ。
ある人に言われた。心にゆとりが出てくると、悲しかったことや辛いことを逆に思い出したりすると。忙しい時、いっぱいいっぱいな時は思い出さないように心が蓋をしてるけど、ゆとりが出来た時にあふれ出すと。確かにそうかもしれない。
父のことばかり考えていた、父が死んですぐの時とはまた違う感じ。
淡々と事実を思い出しては涙があふれ出す。そう、淡々と事実が頭の中を巡る。
めちゃくちゃになって泣きわめいていた頃とは違う、静かな悲しみが体中に広がる。


悲しみ方が変わっていると言うことは、父の死の捉え方が変わっていると言うこと。同じように悲しんでいるように見えても、同じ所をぐるぐる歩いているように見えても、きっと螺旋階段のように少しずつではあるけれど、変わっていっていると思う。


父の久しぶりに聞いた声。もう二度と聞くことが出来ない声。夢の中でしか聞くことの出来ない声。


今日は父に呼びかけられて嬉しかった。とてもとても懐かしい暖かい声だった。