ござ

今日、ござを作る工程を見た。今はほとんど工場で作っているんだろうが、ハンドメイドで昔ながらの作り方だ。まるで布を折っていくように織っていく。井草の香りがする。いきなり記憶の扉が開いた。


父が入院してほぼ寝たきりになった時、背中に汗をかいてあせもができてしょうがなかった。汗をかいたシーツを取り替えるのにも、右のお腹からチューブが出ているため容易ではない。冷たく絞ったタオルで背中をふくと、赤いあせもが目立つ。


電車の中でふと思い付いた。ござをベットに敷けば汗をかかずにすむ!暑い時に昔ござを敷いていたじゃないか!ナイスアイデアだと思って、病院に行って父に話す。すると、「今日お父さんも、ござを敷けばいいんだと気づいて、お母さんに買ってきてもらうように頼んだんだよ」考えたことは同じだった。


ござを敷いてからは快適だった。汗もそんなにかかなくなった。病室が井草のよい香りで満たされていた。食事の時など、ベットを立てるとござと父が少し下に滑り落ちてしまう。母と一緒に看護士さんにならって、体を持ち上げる方法を習得する。なかなかうまいものだった。


ござを作るのを見ながら泣いた。病室のドアを開くと、父がベットにござを敷いて「快適だよ!」と手を上げたことを思い出した。その時の笑顔が今でも鮮明に思い出される。


だめだ。これ以上、書けそうにない。記憶の扉が次々と開いて、涙が止まらない。


ござの香りは父との思い出の香り。