おばあちゃんの残したもの

夫のおばあちゃんが亡くなり、いま私たち夫婦はおばあちゃんの家に住んでいる。小さな庭がある。小さいが日当たりも良くて、所狭しと様々な植物が植えられている。今は梅と沈丁花(じんちょうげ)が見頃。おばあちゃんは香りのする花が好きで、水仙、バラ、梅、沈丁花、れんぎょう、金木犀などが植わっている。他にもたくさんの花々が季節ごとに咲く。
一昨日、二階のベランダで洗濯物を干していると、我が家の前を若い男女が歩いていくのが見える。すると女性が「すごいいい香りがするねぇ」と歩きながら我が家の庭を見やる。私は嬉しくなって、二階から「それは沈丁花の香りですよ〜」と大声で叫びたい気分だった。(叫んではいない)
おばあちゃんが一つずつ植えてきた花たちが私たちを、見知らぬ人たちを楽しませる。見てよし、香ってよし。季節を感じたり、ふっとリラックスできたりする。おばあちゃんは沢山の贈り物を私たちに残してくれた。「花は太陽からエネルギーをもらう。女性は花からエネルギーをもらう。男性は女性からエネルギーをもらう。」と華道の先生が言っていた。色とりどりの花や、美しい緑の葉たちは人にエネルギーを与えると思う。女性だけでなく全ての人に。
忙しい日々の中でも、ちょっと街を見回してほしい。植物たちが季節の移り変りを教えてくれる。私は花を見たり、家に飾ることで心が豊かになる。家に花が飾ってあると、ただその一輪で生活に彩りが加えられる。心や生活にゆとりがないと花を生けたり、見て感動したりできない。全ての人が心に少しのゆとりを持って花を楽しめる社会にしたいものだ。今の社会は、みんな働きすぎ。いや、働かせすぎ。逆に仕事に就きたくても付けず、心のゆとりがなくなってしまっている人もいる。そんな社会を変えていくためにも、植物からエネルギーをもらって頑張りたいものだ。