好きが広がるということ

出掛けに張り切ってCDウォークマンをバックに詰め込む。小さいバックでギリギリ。何で張り切っているかというと、最近初めて自分でCDウォークマンを買ったのだ。今やMDやアイポッドなど色々出ているのに、私はやっと今頃CDウォークマンを手にした。先日も持って出たのに、カバンの中で鳴っていたらしく、聞き初めてすぐに電池切れ…今回は電池も替えたし!電車の中でのウォークマン・デビューだ!と再生ボタンを押すが鳴らない。ボリュームも最大にするが鳴らない。こんちくしょう!また電池切れか?!と本体を見ると、なんとCDが入っていない… わざわざバックにぎゅうぎゅうに詰め込んできたのにと、悔しさ半分情けなさ半分。 初心者はこんな失敗もするのだ。
私は音楽は学校の授業でぐらいしか触れる機会もなく、それもなくなると本当に音楽とはかけはなれた人生を送っていた。そんな私と音楽との出会いは、いまの夫との出会いから始まる。彼はかなりの音楽好きで、私を様々なライブに連れていってくれたり、CDを貸してくれたりした。もともと自分の中に音楽の趣味がないものだから、何を聞いても、ずーと聞いていると「これいいねぇ」となる。音楽に触れる機会は格段に増えたが、しかし受け身だったから、彼の音楽仲間と話していても「私はあんまり音楽は聞かないから…」という感じだった。
そんな私に転機が訪れたのは、ある昼休みのカフェ。流れている曲はどれも心地よく、「こういう感じの音楽好きだな」と思った。厨房でスタッフが歌っていたのも印象的で。でもこの音楽はどこに行ったら手に入るのだろう…今まで彼から音楽を受け取ってきただけの私には、その方法が分からない。どの曲もボーカルが女性だったり、男性だったりで有線かなとも考える。そこで私は勇気を出してスタッフに「今かかっているのって有線ですか?」と聞いてみると「フィシュマンズのトリビュートのCDですよ。」とジャケットを見せてくれた。「トリビュートって何だ?」と思いつつも、ジャケを目に焼き付け、さっそくCD屋さんへ行って買い求める。それ以来そのCDは私のお気に入りだ。
一つ自分で好きな音楽を見つけると、他にも目がいくようになる。いくつか自分で音楽を選ぶようになる。好きな音楽が増えていく。好きなものを一つ見つけると、どんどん好きなものが増えていくんだな。好きなものができると「最近ね〜フィシュマンズのCDがお気に入りなのさ〜」と話すようになる。好きなものがないと話すことがない。好きなものができると話すことがある。好きなものができると、そんな自分を大事に思える。自分を好きになれる。好きなものを増やしていくということは、つまり、自分を作っていくってことなんだなぁ。
これからも一つずつ好きなものを増やして自分を大好きになっていこう。