父のこと

お盆に母からお墓参りに行って欲しいと言われた。母は長野に行っていてお盆中いないのでお花を飾ってきて欲しいと。無宗教なのに、お盆ってのも何だかな〜と思いつつも、母が望むならと行くことにした。それが7月14日。前回、父の日にお墓に行って号泣した記憶がまだ新しく、どうなることかと思いつつ向かった。その日は朝から雨だったが途中から快晴で真夏日になった。これはビールだな!と思い八王子の駅でビールを二本買う。最寄りの駅のコンビニにはお酒が売っていないため、早めに買わなくてはいけないのだ。父が昔好んで飲んでいたアサヒスーパードライの350ml缶を手に取る。ちょっと考えてから、500mlに変更(笑)お酒好きだった父は350ml缶では満足しないだろうと。私は本来はキリン好きなのだが、今回は新発売のアサヒのビールを選んだ。お花もいつも寄る花屋で買い求める。今回は真夏日だったので姫ひまわりとリモニュームをセットで。濃い黄色は父の笑顔を思い出す。


お墓に着くと汗だくになっていた。お盆の時期なので、数人の人がお参りに来ていた。休憩所でバケツと杓子を借りて階段を登っていく。前回は駅を降りてから既に泣いていたが、今回は天気のせいもあってか、なんだか明るい気持ちだった。水道で水を汲みお墓に到着。
「お父さんまた来たよ〜」と声をかける。
雑草たちが芽を出し始めていたので、まずはそれを抜く。それにしても暑い。太陽は真上にある。そしてお墓や墓碑に水をかける。その後お花を生け、ビールのプルトップを開ける。トコトコ歩いてきたせいか泡がブシュ〜と吹き出す。ビールを少しお墓に流し込む。そしてお墓の真ん中に置く。私もビールを開け、「乾杯〜!」と父のためのビールと乾杯する。グビッと飲むと、なんだか生ぬるい。思わず「お父さん、生ぬるいね。ごめんね〜」と言ってしまう。今日もなんだか独り言が多いい。


上に羽織っていたシャツを脱ぎ、ノースリーブになる。少し涼しくなったが、日差しが肌を直撃し、火照ってきた。お墓の前の階段に座り、お墓を見ながらビールをグビリグビリとやる。
今の自分の状況や、これからしようと思っていることを父に話して聞かせた。私は父が死んだ今、父の存在は無になっていると考えているが、やはり、骨というのは父の一部であり、父がここにいると思わされるのだ。だから、話した。ビールは早々に飲み終わってしまい、私も500mlにすれば良かったなどと思う。話している最中、自分が将来産むであろう子どもについて話し出したら、鼻の奥がツンとしだして、涙が出てきた。私が子どもを産んだ時に父はいないのだと考えたら、どうしようもなく悲しくなった。父がいないという現実をいやがおうにも突きつけられた。もう、亡くなってから2年が経つというのに、父がいないということが今イチ理解出来ていない部分が自分の中にあるのだった。泣くな泣くな自分と思って空を見上げたら、ものすごく広い青空が広がっていた。「綺麗だなぁ」と思った。そうしたら何だか少し心が軽くなって、また父に色々話した。

一通り話し終わって、今の自分が目標に向かって頑張り始めていること、そのことが父の死をきちんと心のしまうべき場所にしまえるようになりつつあることに気付いた。


自由に自分らしく、そして労働者のために全国を駆け回り仕事を楽しんでいた父を思い出した。私も父のように生きたいと思った。
今回のお墓参りは自分にとって、また新しい一歩になった気がする。