甲子園

2週間くらい前になるだろうか、NHKのニュースを見ていたら沖縄で甲子園の選抜の決勝が行われたと言うのを知った。その時は、特にスポーツに興味のない私は、ふーん位の思いだった。


その日は一人の夜。ベットにごろりと横になった瞬間、あっ!と思った。そうしたら、またまた記憶の扉が開いてしまった。もう、甲子園の季節なのかと。


父が自宅療養をしてから、再入院したのが8月頭。それから、毎日病院に通った。母が午前中と夕方。私が午後。父は甲子園を見るのが好きだった。二人で甲子園を見ながら、特に知っている高校でもないくせに、行った事のある県だからと応援してみたり、負けているほうについ力のこもった応援をしてみたり。私は、「こんなに真剣に甲子園を見たのは初めてだよ〜」と笑いながら父に話した。とにかく、二人で毎日甲子園を見た。


あれから、もう1年が経ってしまったのかと愕然とした。この1年私は何をしてきたのだろう。私の気持ちは全然整理がつかない。
同時に父との入院生活が次々と思い出される。記憶と言うのは、一つ紐解かれると、連鎖反応を起こして紐が一斉に解かれていく。
そうしたらもう私は涙の洪水の中に溺れていく。
一人でずっと泣いた。泣けば泣くほど悲しさや淋しさが募っていく。そうすると、また涙が出てくる。止まらない。


毎年、夏に甲子園を見るたびに父のことを思い出すんだろうなと思う。来年の私は、今の私のように号泣するのだろうか。もう気持ちに整理がついているのだろうか。


暑い夏は父が死んだ夏。夏が来るたびに記憶の扉が開くことだろう。その夏をどう迎えていくか。その夏ごとに私は変化していくだろう。いや、変化していけるといいな。