自然の中で(前編)

2年ほど前に仕事で担当していた地域の仲良しさんからメールが届いた。
「癒しツアー!!決行!!僕が癒されたいので7月2日に養老渓谷(千葉)に行きます。参加する人は明日の夜0時までに連絡をください☆」
突然の癒しツアーへのお誘いは心底嬉しかった。なんだか、自分が人とつながれているんだなぁと思えた。感動したのはよいが、メールを返信するのをすっかり忘れていた。そして次の日の23時半過ぎ、ハッと思い出した。参加しますメールを出さなくては!!


前日に、「nekosiroさん、JRの最寄り駅はどこですか?」と聞かれ答えると、「ブラジル対フランスを観てから行くというのが人としての理なので。8:45着にしましょう。その駅に7時待ち合わせでお願いします。7時6分の電車に乗ります。遅刻厳禁です。」とのこと。ナンじゃその理由は〜!!とサッカーに興味がない私は思うが、仕方がない。みんな4時からのサッカーを観てから、そのまま来るってことだな。テンション低そうだなぁと心配しつつも、7時着ということは6時半には起きなくてはいけないじゃん…大丈夫かい私!!と自分の心配をしはじめた。サッカーを観ていた夫を残し早起きのために先に寝た。


当日は一本電車を乗り遅れたものの、JR駅の7時6分発の電車がホームに滑り込んできたと同時に、待ち合わせの彼らの元にたどり着いた。ホームには二人いて、ちょうど入ってきた電車の中に3人乗っていて、無事合流し、一路養老渓谷へ。朝ごはんを食べてないと話すと隊長(メールをくれた人)が「nekosiroさん、おにぎり食べる?」と2個もくれた。すいた車内でもう一人の女の子と一緒におにぎりをもぐもぐ食べる。
千葉から内房線に乗り換える。昔ながらの電車で、もちろんボックス席。なんだか、そこに収まるとワクワク感が増してきた。電車で遠出するなんて久しぶりのことだ。40分ほど電車に揺られ、あっという間に周囲は田んぼだらけに。五井と言う駅に到着。五井駅からは小湊鉄道に乗る。車掌さんが女性二人で、一人が昔ながらの大きながま口のショルダーバックを首から提げて、切符を売りにくる。「関東の駅百選認定記念」と言う切符だった。写真左下。この小湊鉄道の駅の素晴らしさ!!あまりに時間の流れがゆっくりで、気持ちもゆったりとして写真を撮るのを忘れてしまったが、もうこれでもかってくらい、ひなびていて何とも言えない風情をかもし出している。忘れ去られてしまったような、そんな駅舎たち…駅を過ぎると、また田んぼの中をゆく。時々トンネルをくぐる。暗いトンネルの中で車両の後ろを見ると小さな半円のトンネルの入り口から緑が沸き立っているのがぽっかりと見えた。そして、トンネルを抜けると、また緑に多い尽くされる。お喋りをしたり、ボーっと景色を眺めたり、あくびをしたりしながら電車に揺られる。ローカル線はとてもフレンドリーで車掌さんのいる場所も腰から下に間仕切りがあるだけで、上は開いている。最後尾に座ったおばさんが盛んに車掌さんに話しかけていて、車掌の女性も親しげに話しかけている。なんだか平和だなぁ。人と人が顔をきちんと合わせて生活しているんだなぁと思った。もうすぐ養老渓谷駅という所で、そのおばさんがおもむろに立ち上がり、私たちのほうへ歩いてきた。そして、「養老渓谷行くんでしょ!これあげるから」と一人一人に養老渓谷マップをくれた。快く受け取ったものの、一体彼女は何者?と話題に。7:54列車は養老渓谷駅に到着。列車の先頭に行っていた二人も同じようなパンフレットを持っていて、「こんなのもらっちゃった!」「うちらももらったよ〜。あのおばさんでしょ〜」「何者なんだろうね」「養老渓谷の駅で働いているんだって」なるほど〜 それでか。この後の「旅」で、おばちゃんから貰ったマップはかなり活躍する。なぜか大きな道路地図をもってきた人はいたが(笑…いや、その地図を見て自分たちがどこに行こうとしているのか分かって良かったけどね。)、誰一人として養老渓谷の案内を持っている人はいなかったのだから。
そんなこんなで我々の「旅」は始まった。私はこの時点で既に「来て良かったなぁ」と実感していた。「誘ってくれてありがとう」と言う気持ちでいっぱいだった。
後編につづく…