大好きな友人の一歩

中学時代、とても仲の良かった友人が子どもを産んだ。
毎朝、待ち合わせて、いつも私が遅れて走って行った。「ごめん!」と毎朝のように言う私と、「いいよ〜」と微笑む彼女。二人で野球部の試合をよく見に行った。そんな彼女が子どもを産んだ。


退院して実家に戻った彼女と子どもに会いに行った。思い返してみれば彼女と会ったのは、彼女の結婚式以来だった。私は彼女にオフホワイトのキャスケード型のブーケを作った。柔らかい色の大輪のバラは彼女にとてもよく似合った。彼女はとても美しかった。そして、本当に幸せそうだった。彼女の優しい微笑みに、その日は涙した。そんな彼女が子どもを産んだ。


母親になった彼女は、もっと美しくなっていた。
「ゴメンね〜髪の毛とかもボサボサだし、メイクもしてなくて…」とちょっと照れながら私を家に迎えてくれる。その腕にはしっかりと子どもが抱かれていた。そう。謙虚な彼女の姿の中に、しっかりと胸を張った母親の姿があった。


子どもの泣き声がなんだか心をくすぐった。授乳をしたり、おむつを替えたり、寝かしつけたり大忙しの彼女。彼女のそんな姿を見るのは楽しかった。嬉しかった。彼女が幸せそうに子どもに微笑みかけたり、手をつないだり、背中をトントンとする様子は本当に美しかった。私の心は喜びで一杯だった。


私の大好きな友人が母親になった。
新しい一歩を、大きな一歩を踏み出した。
彼女の授乳する後ろ姿を見て、心がほっこり暖かくなって、なんだか尊敬してしまった。
新しい人生を歩み出した彼女と子どもと家族たちに大きな幸せがありますように。



 母の手と子どもの手。暖かいつながり。
 授乳する彼女の後ろ姿。その姿は立派な母親だっ                    た。